生きがい挑戦 グラスアートラン栽培

アトリエでグラスアートを制作する木村さん

蘭栽培家・グラスアート作家 木村昌己さん

蘭を育て、感激が極まる瞬間

木村さんの温室で咲く白い蘭 一度自信がつくと、いろいろな品種が欲しくなるのも自然の流れ。木村さんは、国道17号沿いにあるカトレア専門店を日曜毎に尋ね歩き、様々な欄の品種を一株ずつ、3~4年の間買い続けた。

そして、多くの品種を試す中で、欄の品種それぞれに管理の仕方が違うことに気づく。管理が相当難しい蘭もある。いろいろ試すうちに、蘭の世界に入り込むきっかけとなったカトレアの持つ面白さ、それも原種の面白さに魅かれていった。

「カトレアの原種の面白さとは、交配種に比べ、やさしさがあり、気品に満ち溢れ、かつシンプルなことです。カトレアの原種の持つ、その神秘的な美しさにのめり込んでいきました」と語る木村さん。

今、木村さんが育てているのはカトレアのうち、トリアネイとワルケリアナというブラジル産の原種が大半。群馬在住の原種育成のプロ・茂原隆氏に大きな影響を受けたという。

木村さんの温室で咲く白と紫の蘭 蘭の原種の愛好家は全国いたるところに存在し、初花の品評会などでデビューを果たし、面白い花かどうか多くの人々に評価され、人気の上がった原種は、株が増えれば愛好家に株分けされていく。

木村さん曰く、「温室が無くても、初心者の方でも、蘭は、交配種、原種ともに育てられます」とのこと。「ビギナーは、まず交配種で、花をつけているものから始めればいいのでは」とアドバイスする。ビギナーは、まず花付きの蘭を買い求め、次の年に再び花を咲かせることにチャレンジすることになる。

蘭の株を越冬させるのに一番問題になるのが「最低温度」。株だけを維持するだけなら、胡蝶蘭の場合が10度、カトレアの場合は5度、が「最低温度」とのこと。このときのコツは、「極力水は控えめにやること」だと、木村さんはアドバイスする。

蘭はまさにデリケートな生き物だが、旅行の時など一週間くらいは放っておけるとのこと。しかし、水をやって霜などで凍ってしまったら、一瞬にして蘭の命は絶えてしまう。

年間で蘭を放っておけない、一番怖い時期が3月らしい。朝の気温に比べて、日中の気温が上がり過ぎるのが怖いとのこと。

木村さんの温室全景 木村さんは、「最低温度」の管理法として、温室専用のストーブと換気扇、さらにサーモスタットを付けている。ブザーが鳴り響き、夜中に起きることもあるという。

「蘭を育てるのは、赤ん坊を育てるのと一緒で、毎朝毎晩のチェックと温度、湿度などの環境管理が第一。株をいかにもたせて次の年に維持するかが大切で、花を咲かせるのは二の次です」と語る木村さん。

ビギナーにとっては特に、子供を育てるがごとく、毎朝毎晩「温度管理」の世話をやき、また、温室以外で蘭を育てるなら特に、スプレーで霧吹きをしながらの「湿度管理」も大切とのこと。

こうして、我が子のように育てた蘭が、木村さんにもっとも感動を与えてくれる瞬間は、原種どうしの交配種を手に入れて、初花が咲いたときだという。おそらく大事に育ててきた一人娘の花嫁姿とダブるほどの、感激が極まる瞬間なのだろう。



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